14.バイノーラル撮影-近い物体と近接効果

Free Spaceは、物体に近づいた感じを収音することに優れています。
マイクロホンの近く(5フィート(約1.5m)以内)に目立った音があると、ぞくぞくとします。これは、物体が見えなくても、3Dサウンドが脳に何かが近づいていると知らせるからです。とてもリアルに感じられるので、体が警戒すること、あるいは、警戒して反応を示すことは抑制することができません。特に、音がもっともらしい場合はなおさらです。
最初にバイノーラルを聞いた時に人々が考えるのは、バイノーラルは他の人を怖がらせるために使うにはもってこいだということです。

音が近くにある感覚は、バイノーラル近接効果です。
従来のマイクでも近接効果は起こります。しかし、それはマイクロホンのレスポンスが、音が近づいたか、遠ざかったかで変わる効果です。
Free Spaceバイノーラルマイクロホンでは、マイク自体の性能というよりも、3D音像自体の変化なのです。
多くの場合において、バイノーラルオーディオで音が近づいたという印象が収音できるのはたいへん好ましい特徴です。というのも、何か他のものがそこにある(体の外に)というヒトの3D体験を強調してくれるからです。
しかしながら、バイノーラル録音にビデオを加えると、カメラレンズの歪のために、映像フレームの中の視覚的な近接感が劣化してしまうことがあります。したがって、近接した対象物をバイノーラルビデオに収録する場合、使用するカメラやレンズのタイプを検討しなければなりません。

DSLR(デジタル一眼レフカメラ)の長焦点レンズは、バイノーラルビデオを撮影するにはうってつけです。奥行き感の狭い空間の映像を(背景がボケた)、HDビデオで撮影することができるため、このレンズだけが3D体験にプラスの効果を生みます。
しかし、音楽家の演奏などの近接した対象物を撮影するには、あるいは、ASMR(脳がとろけるように気持ちの良い)ビデオのためには、広角レンズの使用を検討したほうが良いでしょう。広角レンズは、近接した対象物を視点にあわせてバイノーラルビデオ撮影するには、たいへん優れています。なぜならば、聞いている音にくらべてより近づいた映像の方が、その音にマッチするからです。

50mm以上の長い焦点距離のレンズで近づいた対象物を撮影するには、正しい遠近感ですべての対象物がフレーム内に収まるように対象物から距離を離して撮影すべきかもしれません。
ギターを演奏している人を撮影するには、カメラを5~10フィート(1.5~3m)離してフレーム内に収めなければなりません。この場合、問題になるのは、ビデオでは、その人がちょうど3フィート(0.9m)だけ離れているように映っているのに対し、カメラに取り付けたマイクで収音した音により、脳がその人から5~10フィート(1.5~3m)離れているように感じることです。このことは、ビデオと同期させたバイノーラルにおける潜在的に大きな課題です。そのような距離知覚の不一致によって、ビデオを見ている人を混乱せてしまう可能性があります。
これを解決するためには、コンプレッションを少し用いる(後で解説します)、あるいは、カメラからマイクを外して、指向性は同じままで焦点が合っている対象物の近くに移動する(カメラに映らないように)といった方法があります。

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