18.バイノーラルオーディオのポスト処理

「ポスト」について多くを語ってきました。それをここで説明します。
ポストプロダクションは、生の映像とオーディオを収録した後、ビデオとオーディオについて行う作業です。
ここでは、映像のポストプロダクションには触れず、バイノーラルオーディオのみに焦点を絞って解説します。ビデオとオーディオ編集機の両方を使用します。

バイノーラルに関しては、磨き上げなければいけないことはさほど多くありません。
マイクロホンから出力されたバイノーラルサウンドがすでにたいへん優れているということは、素晴らしいことです。しかしながら、異なる場所で録音された、サウンドレベルが違う別々のオーディオやビデオを使用する場合、音の一貫性を確保するために「バランス」を取ることは重要です。
ポストでは、ベストなトラックを用いて録音された生音の品質を向上することがゴールです。

ポストでカバーすべき最も重要な項目の1つがローエンドです。
低域ロールオフフィルタを入れて録音したかどうかに関わらず、ミクシングする時には、ローエンドに注意しなければなりません。ローエンドが不足したり、強すぎたりしないように、うまくバランスを取らなければなりません。自分の耳で確認しているのであれば、ローエンドが自然に感じられるようにすることができるはずです。
ローエンドが不足したオーディオトラックは、弱くまた薄っぺらく感じます。しかし、ローエンドが強すぎると、極めて混乱した不自然な音になります。

約200 Hzから下の帯域をカットしたり、あるいは、ブーストしたりすることを話していますから、選択するツールは、ローシェルフフィルタになります。
私は、ローシェルフフィルタの「ニーポイント」を約200 Hzにして、ゲインを上げるか下げるかします。参考ポイントとしては、低域ロールオフフィルタをオンでFree Spaceで録音した場合、このニーポイントでゲインを約+9dBにすると、ローエンドをほぼリカバーできます。

バイノーラルの体験をより「ライブらしく」するために、ポストでコンプレッションを用いるのも良いです。
私は現在、バイノーラルビデオを編集するために、Final Cut Expressを用いています。FCEには「ダイナミックプロセッサ」オーディオエフェクトがあり、こればコンプレッサ/リミッタです。
多くの場合、ダイナミックプロセッサをディフォルト設定で使用し、ゲイン設定のみ調整します。しかし、ピークレベルが0dB(最大)を超えるのを防ぐためだけに、リミッタ機能をONにしています。
自分で行っていることが理解できていれば、他の設定も調整することができますが、平均的な人にとっては、ほとんどのオーディオプロセッサのプラグインのデフォルト設定がうまく機能します。

コンプレッションで行うことは、録音の中から最も音の大きな所を見つけて、それに合わせてゲインを調整することです。
録音で最も音の大きいところが不自然になり始めるところまでゲインを上げます。そして、そこから数dBゲインを下げて、自然な音に戻します。トラックの他の所も、より音が大きくなり、よりライブらしくなりましたが、3D音像定位は完全にそのまま維持されています。コンプレッサプラグインにコンプレッサの動作を表示するメータがあれば役に立ちます。
このようにして、何dBつぶせるかを正確に確認することができます。

コンプレッションに関して、その他たまに調整するのは、「しきい値」の設定だけです。
この設定は、圧縮される音のカットオフ音量レベルを指定します。したがって、この閾値を超える音量のサウンドはリミットされ(たたかれ)、このレベルより小さな音量の音はゲイン設定分だけブーストされます。
もしこの設定が0dBであれば、何も圧縮されません。一般には、穏やかなコンプレッションであれば-6dBに設定し、強力なコンプレッションであれば-12dBに設定します。

注意:ステレオコンプレッサのカップリングを外さないようにしてください。
外すと、各チャンネルが個別に圧縮されてしまいます。両チャンネルは一緒に圧縮されなければいけません。個別の左/右コンプレッションはバイノーラル効果を崩壊させます。

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